「地方創生」シリーズの18回目は一般財団法人日本不動産研究所理事で東北支社長の茂木泰氏へのインタビュー後半。同研究所は、東日本大震災から3日後には「東日本大震災土地評価連絡会」を立ち上げ、「正常な不動産価格の把握」に向けた準備を行うなどした。被災からの復興と地方創生に向けた業務の第一線で活躍している茂木氏に、引き続き話を聞きました。

(前回からの続き)

 茂木氏 2つ目の要因は、地域の付加価値の上昇であり、仙台市においては地下鉄東西線の開通や仙台駅東口の開発などによる影響が大きい。3つ目は、東京で不動産価格の高騰や利回りの低下等によって物件購入が難しくなった不動産ファンドが、仙台での投資にも力を入れ始めていることである。

 だが、1つ目の要因による地価上昇は、最近になって落ち着きを見せてきている。一時期、被災地からの移転需要を狙った土地投機がもっと起きるのではないかとの懸念があったが、実際にはそれほど多くはなかったようだ。逆に、震災復興土地区画整理事業などでは、区画整理後に一定の住民がそこへ戻ってくることを前提に、地価が評価されているため、戻る人々が少ないと、そうした地域の地価はこれから下がる可能性もある。

 2つ目の要因による地価上昇は、これからの地方創生に向けてむしろ望ましいことである。したがって、ファンドなどによる物件の取得競争が過熱化しなければ、地価形成は次第に正常化されていくこととなろう。

 ――不動産という観点から見て、地方創生に必要なものは何でしょうか。

 茂木氏 地方創生に必要なことは3つあるように思う。その1つは、公的不動産の最適活用を図ることである。国や自治体などは多種多様な不動産を保有しているが、立地の良好な場所にも数多くの物件を持っている。現在、「公共施設等総合管理計画」の策定が国から要請されているが、施設の老朽化や人口の減少・高齢化による施設需要の変化、遊休施設化等に対応して、配置の見直しを含め施設の最適化(再編・活用)を図っていく必要がある。その中で、これらの公的不動産を活用し、公共と民間とが連携してまちづくりやエリアマネジメントを行っていくことが重要である。

 被災地関連では防災集団移転促進事業に伴う被災した土地の買い取りなどで公的主体が保有する土地が増えており、これをいかに活用するかが、今後大きな意味を持つようになってくる。現在のところ、そうした用地では、産業施設や商業施設などの誘致を計画していることが多いようであるが、すべての地域でそれを実現するのは難しい面がある。実需に即し、地域の特性を生かして計画の具体化を図っていく必要がある。

 2つ目は、空き家・空店舗等、民間の既存ストックの活用である。空家対策特別措置法が5月に完全施行され、環境や防災・防犯面から空き家の取り壊しがクローズアップされているが、地域活性化や地方創生の観点から、リフォーム・コンバージョン・賃貸・売却等、空き家・空店舗等の積極的な活用が求められる。仙台市においても、中心部の空店舗・空事務所等を活用したリノベーション型都市再生推進事業を行おうとしているが、地域活性化やエリアマネジメントの観点からも重要な取り組みと考えられる。

 3つ目は、地方創生といっても、それぞれの地域によって、固有の特質や課題があることである。このため、同じ手法を一律に適用するのではなく、各地域に合った手法を検討していく必要がある。当研究所では、地方創生支援プロジェクトを立ち上げ、全国のネットワークを生かして、各地域の取り組み状況などをホームページで紹介しているので参考になると思う。

 また、地方創生には不動産のような「モノ」を有効活用するだけでなく、「ヒト」を育成・活用していく発想が欠かせない。仙台には数多くの大学があり、多くの若者がいる。環境を整備すれば、若者による起業がもっと増えてもおかしくはない。この活力をうまく引き出していくことが大切ではないだろうか。 virtual offices .